ここでは探偵業界の知識をコンパクトにまとめました。
なじみのない業界で、情報も乏しいですが、このページの内容程度を知っておくだけでも十分です。
多少なりと知識を持っていると、悪徳業者に騙されることも減るので、頭に入れておきましょう。
探偵業は普段人の目につかない業種ですが、実はすごい業者数があります。
警察庁資料「平成25年中における探偵業の概況」によれば、届け出数は全国で5,670社にものぼります。
これには一応届け出を出しただけのペーパーカンパニーや副業探偵も含まれるので、実際はもっと少ないですが、それでもかなりの数です。
株式会社等の法人会社組織は全体の1/3以下で、規模は個人業者・零細業者が大半です。
探偵社の仕事の7割は浮気調査で、それしかやらない浮気調査専門の探偵社もあります。
2割は人探しですが、初恋の人探しなどは稀で、家族の依頼による家出人・失踪者探しがほとんどです。
残りの1割が結婚調査や盗聴器発見など、いろいろな調査です。
素行調査は、浮気調査以外のものを指すことが多いですが、メインの調査手法は行動調査(尾行&隠し撮り)であり、やり方は似たようなものです。
テレビや映画では、名探偵が密室殺人事件を解明したりしますが、現実の探偵が刑事事件に関与することはほとんどありません。
探偵業の開業には国家資格も免許も必要ありません。
地元警察経由で公安委員会に届け出をすることが必要ですが、規則どおりに書類を提出するだけです。
ぶっちゃけて言えば、誰でも素人でも明日から探偵社を始められるわけで、これが零細業者の乱戦業界になっている原因です。
しかし、免許がないから、みんな素人のいいかげんな業界かといえば、それは違います。
一流のプロは大変な技術を持っており、常人の及ばない集中力・瞬時の判断力・耐久力などを持っています。
ただ、それを1級○○士、2級○○士みたいに客観的に認証するシステムがないところが、ユーザーにはとても困る点なのです。
探偵業法という法律があります。
2006年成立、2007年施行の比較的新しい法律です。
探偵の権限などを定めた法律なんだろうと思っている人もいますが、違います。
探偵には警察のような捜査権はなく、一般人以上の特別な権限はありません。
プロの探偵は、一般人にも許された範囲の方法を用いて調査をしているのです。
探偵業法は、簡単に言えば悪徳探偵を防ぐ法律です。
悪徳探偵による消費者トラブルが多いことを受けてこの法律が作られました。
内容は、調査で知った秘密を漏らしてはいけない、調査結果を違法なことに使ってはいけない、暴力団員は探偵業をしてはいけない、といったことです。
日本の探偵業にはいくつかのルーツがあります。
日本で最初の探偵社は、明治時代に岩井三郎という元刑事が起業したと言われています。
もうひとつのルーツが、やはり明治時代に初めてできた興信所。
これは企業の信用調査(支払い能力、倒産の危険度を調べる)をする機関を指す言葉でした。
それがその後、浮気調査などの個人調査にも進出し、特に戦後の混乱期には何でもやるようになり、探偵社との区別が曖昧になります。
そのうちに興信所のトップ企業だった帝国興信所は、80年代に浮気調査などの個人調査から撤退します。
社名も帝国データバンクと改め、企業の信用調査一本に絞るようになりました。
企業の信用調査サービスは、1位の帝国データバンクと2位の東京商工リサーチでほとんどのシェアを占める寡占業界です。
この業種を興信所と呼ぶことは今日では稀になっています。
そういうわけで、探偵と興信所は今日では同じような業種を指す言葉に変化してきました。
浮気調査をするのが探偵で、結婚相手の身元調査などをするのが興信所、と説明する人もいますが、実際にはそんな区別はありません。
社名に探偵とついていようと興信所とついていようと、仕事の大半は浮気調査で、ほかの調査も幅広く受けます。
探偵社と興信所は同じものだと考えて差支えありません。